北 岳


                        2012年9月7日〜9日


 秋の花を見に行きたいと思い、今年初めて北岳を訪れた。
 去年は初夏から夏の間に3回も北岳に花を見に行ったが、ヒメセンブリなどリンドウをまた見て
みたいと、この時期は3年ぶりの北岳である。

 

  今年の夏も2010年と同じく9月に入っても残暑が続いている。2010年の記録を見ると、9月
 7日に東京では13回目の猛暑日だった。それほどではないにしても、暑さを一時的にも凌ぐには山に
 行くのが手っ取り早い。
  それも1日だけの涼しさに浸るのでは勿体なので、時間に余裕があることもあって御池でテント2泊
 でゆっくり山頂を回り花を堪能して、ついでに涼しさの中に身をゆだねようと思った。

〈第一日〉
     朝、家を出て、途中で食糧などを買い込み、
  広河原にお昼頃についた。ここのところ天気
  予報では午後一時雨が続いているが、広河原
  から歩いてみると、道は乾ききっている。

   幸いに北岳周辺では夕立や雷雨がなかった
  ものと思われる。実際、御池で2泊したが、
  2泊とも夜にテントをパラパラと雨がほんの
  一時的にたたいただけだった。

   野呂川の河原には大きなフジアザミが今年
  も花をつけていた。

    フジアザミ 
       二股へ向かう。この日に二股までの間で出
    会った下りのパーティーはたった3組。この
    時間だからとも言えるが登ったのはもう一人
    だけだった。

     コウシンヤマハッカやキツリフネが二股ま
    での間にたくさん咲いている。コウシンヤマ
    ハッカは全体に終わり気味で、キツリフネは
    葉が何かのウイルスにやられているようで、
    ほとんどが白く変色していた。

     いつもはたくさんあるクサボタンはほぼ終
    わってカールを巻いた花はほんの少ししか見
    られなかった。それに引き換え、キオンやサ
    ラシナショウマがたくさん咲いている。

   コウシンヤマハッカ  
 
   キオン サラシナショウマ 
     大樺沢を渡る最初の橋周辺は景観が少し変
  わっていた。手前の右からの沢周辺に大きな
  岩が流れ出していたのと橋が20mくらいい
  つものところの下流に掛けられていた。
   おそらく豪雨か雪崩などの影響で大樺沢と
  その支沢からの大量の岩が流れたためだろう。

   レイジンソウが薄紫の花をまだ咲かせてい
  た。ホソバトリカブトはまだ旬の状態でソバ
  ナはどうにか残っているものが見られた。ヤ
  マホタルブクロは大きな花を咲かせていた。
  ソバナ
       先を歩いていたあーちゃんが立ち止まって
    指を口に当てて、「しーっ! オコジョがい
    る。」とささやいた。

     ホントだ。しばらく立ち止まっていると、
    ボクらの周りをすばしこく走る回り、立ち止
    まって様子を窺う。人に興味を持っているか
    のように近付いたり遠ざかったり。

     止まった瞬間、何度かシャッターを押した
    がうまく写真には撮れなかった。

     オコジョはボクらも何回も見ているので珍
    しくはないが、こういうかわいらしい姿の動
    物と出会うのも山の楽しみの一つである。
  ヤマホタルブクロ   
       翌日も八本場のコルを越えたあたりでオコ
    ジョに出会った。

     センジュガンピが残っており、まだコウシ
    ンヤマハッカやキツリフネ、ゴマナ、サラシ
    ナショウマなどが続く。

     その間にしょっちゅう現われる左手からの
    水の流れはとても冷たい。

     大樺沢に架かる橋を左岸に渡る地点では、
    沢の流れは伏流水になっていた。

     オドリコソウの残っているのもあり、ハク
    サンフウロやトモエシオガマの残り花も見ら
    れた。
  オコジョ   
     沢筋に近付いてくるとクガイソウが見えて
  くる。多くが花も終わりに近いが、中には今
  が旬のものも見られる。

   樹林帯を越えて開けるとすぐにやっと咲い
  たばかりという感じでミヤマハナシノブが迎
  えてくれた。
   今日、広河原から見上げたとき北岳山頂部
  は雲に隠れていたが大樺沢は見えた。そして
  かなり雪渓が残っていることが確認できた。
   ということは雪解け直後の場所にはまだ夏
  の花が多く残っているのではという期待感が
  あった。その期待は現実となった。

   ヤグルマソウも一株咲いていた。普通7月
  上旬に見られる花だ。
     クガイソウ
 
   ミヤマハナシノブ ヤグルマソウ 
     二股到着。やはり雪渓が多く残っている。
  8月末から9月上旬にかけてはこれまで4回
  来ているが、これほどの雪が残っていたのは
  初めて。

   ミソガワソウやミヤマハナシノブ、タカネ
  グンナイフウロなどが見られた。

   御池小屋に到着。手続きをしてテントを張
  る。ボクらで5張り目。金曜日だというのに
  人が少ない。3年前に同じ時期にきたときは
  日曜日だったが、もっとテントの数はあった。
   さらにあとで分かったが、この日、御池小
  屋の宿泊者はゼロだった。3年前は確か3回
  に分けて夕食を摂っていた。というのはその
  とき御池で偶然にも会社時代の先輩に出会い、
  その方は小屋泊まりで一緒に話をしていたの
  で記憶は確かだ。
    二股付近の雪渓 
  〈第二日〉   
     4時半頃目が覚めて外を見ると満天の星。
  明るくなってきて少し雲がかかってきた。

   午後に一時雨の予報もあるので早めにスタ
  ートする。

   ヤマハハコ、イブキトラノオ、エゾシオガ
  マなどの咲く御池周辺から二股へ出て八本場
  のコルに向かう。
   
   アカイシミヤマクワガタがまだ残っていた。
   そしてクルマユリも一株見られた。ここの
  斜面でクルマユリを見たのは初めてだ。
  アカイシミヤマクワガタ
         二股から上部は、沢筋を離れるまで雪渓が
    残っているが、その上を歩くことはない。

     雪渓が残っているので雪解けが遅いところ
    ではまだ夏の始めに見られる花が良い状態で
    咲いている。

     ミソガワソウ、ミヤマハナシノブ、タカネ
    グンナイフウロ、ミヤママンネングサなどだ。

  クルマユリ   
 
  ミソガワソウ  タカネグンナイフウロとミヤマハナシノブ 
 
  タカネグンナイフウロ  ミヤママンネングサ 


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