夕張岳


                          2011年8月23日


 夕張岳はいわずと知れた花の名山であり、多くの花が咲く6月下旬から8月上旬までには何度も
登ったが、8月下旬に訪れるのは初めてである。
 ユウパリリンドウやミヤマアケボノソウが咲いているのは想像できるが、その他にこの時期にこ
の山で見られそうな、われわれが今まで目にしていない花を見るのが一番の目的である。


  前日、夕張岳ヒュッテにお世話になった。一昨年の7月末にも一度泊まったことがあるが、こ
 の日はわれわれ二人だけだった。その当時から、ヒュッテはユウパリコザクラの会の方が管理を
 されている。トイレもバイオに替わってとてもきれいになっていた。ただ、ネズミがいて、食料
 は天井につるした紐に吊るしておかないと食べられてしまうということで、その点を注意された。
  一階には食料があることをネズミが知っていて出るそうで、二階に寝ることにした。

      起きてみると、風はないものの雲が広
  がっている。昨日のラジオの天気予報で
  は札幌方面今日は午後から雨らしいので、
  天気は期待できそうにない。でも花の写
  真を撮るには曇りのほうが嬉しい。

   大きな荷物は置かせてもらって冷水コ
  ースを歩き始める。

   エゾアジサイが少し残っていて薄いブ
  ルーの花を咲かせている。しかしこの時
  期はホソバガンクビソウやコモチミミコ
  ウモリがときどき現われるに過ぎない。

   エゾスズランが少し残っていた。

   冷水の沢まではほとんど花は見られな
  い。ここで軽い朝食をとり、馬の背コー
  スとの分岐から時々階段がある道を登る。
  ここまでの樹林帯では風がときどき通る
  ので蒸し暑さは感じない。
    エゾスズラン
 
    ヨツバヒヨドリがいくつか咲いていた。

    のぼりの途中で、エゾクロクモソウが
   咲いていた。暗い赤色の小さな目立たな
   い花だ。

    でもわれわれとしては夕張ではじめて
   見た花なので写真に撮る。

    石原平付近の岩場にダイモンジソウが
   あった。ここにはいつも咲いている。
  ユツバヒヨドリ  
 
  エゾクロクモソウ ダイモンジソウ
 
    望岳台に到着。

    久しぶりに芦別岳が見えた。

    北から北西方向は青空も見えるが、東側
   から雲が山肌を流れてきていて、一部雲海
   を作っている。

    ここから蛇紋岩崩壊地までの道は、とこ
   ろどころで結構笹が覆っている。

    前岳湿原までにミソガワソウやエゾゴマ
   ナ、ヤマハハコ、時期外れのツルリンドウ
   の花が見えた。
  望岳台より芦別を望む
 
  ミソガワソウ エゾゴマナ
      前岳湿原ではミヤマアケボノソウが少
   し見られた。ちょうど咲き始めたようで、
   今年は随分遅い気がする。ミヤマアケボ
   ノソウは釣鐘岩あたりまでずっと咲いて
   いた。

    ウメバチソウも見頃を少し過ぎた感じ
   だが、その後もたくさん見られた。

    シオガマギクも少し見られた。
  ツルリンドウ 
      あーちゃんがストックにつけた鈴を少
   し立ち止まっている間やたつさんが写真
   を撮っている間も盛んに鳴らしている。

    昨日ヒュッテで熊出没情報がいくつも
   出ており、また管理人からも「最近よく
   見かける。落し物もあるし、掘り返しも
   あるけど、でもここのクマは慣れている
   から人を避ける。出遭ったら逃げるよう
   なことはしないで鈴を鳴らすなどすれば
   向こうから逃げてくれるよ。」と言われ
   ていて少し神経質になっているようだ。

    ここ夕張ももともとヒグマの生息地で、
   時々出ることは知っているが、今までは
   何回も登っているものの遭遇したことは
   ない。ただ今日はこの時間登っているの
   はわれわれぐらいなもんだから気をつけ
   るに越したことはない。

    結局、クマには遭わなかったが、下山
   までにすれ違った登山者は二人だけだっ
   た。
  ウメバチソウ
 
    前岳湿原からはナナカマドの赤い実越
   しに夕張岳がはっきりと見えた。

    あたりは全体に雲に覆われて日差しは
   望むべくもない。雨が落ちてこないのが
   めっけもんだ。

    ひょうたん池付近でクマの落し物が道
   端にあった。まだ新しかった。

  夕張岳
 
    蛇紋岩崩壊地に到着。

    ユウパリリンドウがいくつも咲いてい
   た。これもまだ蕾をもっているものが多
   く、開花が今年は遅いのを示しているよ
   うだ。

    カトウハコベもわずかに残っていた。

    何か新しい花は見えないかなと思って、
   しばらく眺めていたが見当たらなかった。



 
    ユウパリリンドウ
 
   湿性お花畑までには、ミヤマアケボノソウやチシマワレモコウ、ナガバキタアザミ、エゾオヤマ
  リンドウなどの晩夏の花が結構たくさん咲いていた。

   また、ハンゴンソウやエゾノシモツケソウもまだ咲いていたが、シロウマアサツキなど7月下旬
  ころに旬を迎える花はほぼ終わっていた。

 
   チシマワレモコウ  ナガバキタアザミ
 
   エゾオヤマリンドウ エゾシモツケソウ
      特に今回はエゾオヤマリンドウが多い
   印象を受けた。

    また、ミヤマアケボノソウは一昨年の
   8月上旬に来たときにそれはすごい量が
   咲いていたのと比べるとだいぶ少ない感
   じがした。

    それでも大きな株で咲いている様子は
   見事だ。
  ミヤマアケボノソウ
 
    木道が終わって釣鐘岩のあたりには、
   エゾホソバトリカブトやオオカラマツ、
   イブキトラノオ、ミヤマリンドウ、ウサ
   ギギクなどがまだ咲いていた。

    ここの草地には他にもエゾヒメクワガ
   タやチシマフウロがわずかに残っていた
   が、この小さな草地は8月上旬までは多
   くの花が咲く楽しみな場所だ。
  エゾホソバトリカブト
 
   オオカラマツ イブキトラノオ 
 
  ミヤマリンドウ  ウサギギク 
      また、ここへの間の草地に、ユウパリ
   リンドウの比較的大きな株が目を引いた。

    吹き通しの少し手前にはタカネナデシ
   コの残り花も見られた。

    吹き通しにもまだユウパリリンドウが
   たくさん咲いていた。終わりかけの株も
   だいぶあったが、旬のものも多かった。

    このあたりには他には咲いている花は
   見られなかった。
    ユウパリリンドウ
 
    山頂までの登りには、もう花は見られなかったが、山頂の標識の下にユウパリリンドウが一
   株だけ咲いていた。何かこの山を代表する花でもあるかのように誇らしげだった。

    山頂からの芦別方面は雲の流れが何か幻想的な風景を見せていた。
 
   
 

 


    このあたりで、雨がぽつぽつ落ちてきた。昨日のラジオの天気予報が当たったようだ。

    帰りは一気に下った。登山口に着くまで大して降られなかったのが幸いだった。

    期待していた新しい花はほとんど見ることができなかったが、また次の機会に楽しみを
   とっておくことにしたい。静かな山旅ができ良い一時だった。



    夕張岳ヒュッテ5:00  冷水の沢5:55  望岳台6:26  憩沢7:35 蛇紋岩

    崩壊地8:05  釣鐘岩8:45  山頂9:05

    山頂発9:30  望岳台10:35  ヒュッテ12:05  登山口12:20


    

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