入笠山


                           2015年6月5日


   友人夫妻と入笠山にホテイアツモリソウとキバナノアツモリソウを見に行った。
  これらの花はどこでも盗掘の対象になって、自然界に自生している場所はごく限られた人に
 しか知られていないはずで、今はその情報は一般には漏れていない。
  入笠山のこれらの花は管理された場所にあって自生とは言えないが、それでも見たい気持ち
 に変わりはない。

  今年になって、ある旅行会社のツアー募集に、入笠山のホテイアツモリソウを見るハイキングというのが
 載っていた。調べてみるとホテイアツモリソウのほかに、キバナノアツモリソウやクマガイソウも見ること
 ができることがわかり、少なくとも前二者が見られる時期に行く計画を立てた。
  今年は5月に気温の高い好天が続いたため、6月上旬に狙いを定めた。

     入笠山山頂部の車の通行規制はおよそ10
  年前から始まったらしい。沢入駐車場までの
  道路にも監視のボランティアがいた。

   沢入駐車場に車は1台。今日はここからの
  人は少ないようだ。

   すぐそばに階段状の登山道があり、近くに
  バイカウツギが咲いていた。

   このあたりでも標高は1400mを越えて
  いるのでまだ見ごろだった。

   歩いてすぐに、ササバギンランがあった。
    バイカウツギ
        一瞬分からなかったがすぐに思い出せた。
     というのはササバギンランはもともと低地
     の里山に多いもので、こんな標高の高いと
     ころにはないものと思っていたからだ。

      しかし、登るにつれて現れる数は多くな
     るようで、1700m付近まで見られた。

      この日は曇り空だったためか、それとも
     まだ花がついたばかりなのか、開いている
     ものはなかった。

      ほかに、フタリシズカ、クリンユキフデ、
     ミヤマキンポウゲ、マイヅルソウ、シロバ
     ナヘビイチゴ、チゴユリなどが数は多くな
     いが見られた。
   ササバギンラン  
 
  マイヅルソウ チゴユリ
     ここの道の両側は、カラマツやシラビソな
  どの針葉樹のほかダケカンバもあり、間伐も
  行き届いた森になっている。

   新緑がきれいだ。

   両側はササに覆われている箇所が多かった
  ので、花はほとんどないだろうと思っていた
  だけに、予想が外れてうれしい。

   小一時間ゆっくり歩いて、入笠湿原の入り
  口に出た。ここはシカよけの防護網が張り巡
  らされていて、歩道は扉がついている。それ
  を開けて中に入り、締めて外に出るようにな
  っている。
  扉を開けて中に入る
     湿原と言っても、尾瀬ヶ原のような池塘な
  どはなく、少しの流れがあるだけで、消滅し
  かけているものだそうだ。そのための保護が
  行われている。

   ズミが満開に近い。とにかくズミの木がこ
  の一帯には多い。木によっては蕾だけのもの
  があり、蕾の時にはピンクがかったものが多
  くきれいだ。

   さっそく、山彦荘の庭に生えているキバナ
  ノアツモリソウを見せてもらいに行く。
    ズミ
 
  キバナノアツモリソウ  キバナノアツモリソウ
      のちに、スズラン園地で休んでいたときに、
  シルバーボランティアの方がいて、キバナノ
  アツモリソウを見てきたと話したら、実は今
  年の春に山彦荘のそれが盗掘にあったという。
   いくら珍しい植物だといっても人のうちの
  庭から盗むというのを聞いて呆れてしまう。

   ここから通称お花畑というところを通って、
  山頂に向かう。

   途中に小川を横切る小さな森があり、クリ
  ンソウがたくさん咲いている。ちょうど咲き
  始めの株がほとんどだ。

   女性たちが、「こんなに群生しているクリ
  ンソウを見たのは初めてだわ。」と言ってい
  た。

   サンリンソウもたくさん咲いていた。
    クリンソウ
       ここを抜けるとお花畑があり、シカよけの
    扉を開けて中に入る。周囲には木々があり、
    一帯が開けた斜面となっていて、ツマトリソ
    ウ、サクラソウ、スズランが咲いている。

     ツマトリソウもこんなに多く咲いているの
    は初めてだ
  サンリンソウ  
 
   サクラソウ スズラン 
       再びシカよけの扉を開けて外へ出て、最後
    の登りに向かう。

     入笠湿原に入る前にもツバメオモトがあっ
    たが、もう花は終わって実ができていた。こ
    この道の岩陰に一株まだ花をつけているツバ
    メオモトがあった。
  ツマトリソウ
       お花畑にもレンゲツツジがあったが、まだ
    蕾の木が多かった。山頂への登り道には開花
    している木があった。

     ニガイチゴも咲いていたが、もう終わりの
    状態だった。

     ここの道にもズミがきれいに咲いている。
    それにしてもズミの木が多い山だ。
  ツバメオモト
 
  レンゲツツジ ニガイチゴ
 
    まぁるい山頂は比較的広く、360度の眺望が楽しめた。

    前日の高気圧が東に移りながらもまだ勢力があったので、薄曇りながら空気は澄んでいて、北
   アルプスまでも見えた。ただ、気温は10℃。少し風が出ると寒い。天気は悪い方向に進んでお
   り、山頂出発時には御嶽山も乗鞍岳も北アルプスも上部は雲の中になっていた。
 
   
  富士山と南アルプス甲斐駒ヶ岳 
   
     たつさんとあーちゃんだけだと、頂上を極
  めることが目的ではないため、どこの山でも
  頂上でゆっくり過ごすことはない。

   でも今日は、「彼らが下山をしようとする
  まで、こちらからは動かないでいようね。」
  と山頂で話した。

   同じ道を戻るのも…と、首切清水まで行っ
  て再び入笠湿原に戻ることにした。

   そこからは車道だった。

   サルオガセが付いている木々が目につき、ふと
  石垣の上を見ると、咲き始めのベニバナイチヤク
  ソウが数株あった。
    サルオガセ 
       入笠湿原の木道をぐるっと回って、ゴンド
    ラ駅方面へホテイアツモリソウを見に行った。

     周囲に金網が張り巡らされた中にホテイア
    ツモリソウが保護されている。

     近くで作業していた人に歩いていい場所と
    花のありかを聞くと、「この金網の中だけに
    ホテイアツモリソウとクマガイソウがあるけ
    ど、クマガイソウはもう咲き終わっている。」
    と教えてくれた。

     ホテイアツモリソウは花の時期が6月中旬
    と言われているが、もう終わりかけになって
    いる。よさそうな状態のものを撮った。
  ベニバナイチヤクソウ  
       黒のネットが被せられた中でクマガイソウ
    の株が枯れていた。もう少しあたりを見たら、
    2株のクマガイソウがまだ咲いていた。

     ラッキーだった。キバナノアツモリソウ、
    ホテイアツモリソウ、クマガイソウ3つとも
    見ることができた。

     スズラン園地でしばらく休んで、みたび入
    笠湿原を通って帰路に着いた。
  ホテイアツモリソウ
 
  クマガイソウ ドイツスズラン
 

 


    駐車場までの途中から小雨となった。

    曇り空ではあったが、視界は素晴らしく、風もなかったので何よりの登山日だった。

    目的としたキバナノアツモリソウ、ホテイアツモリソウ、クマガイソウの3種が見られたのは
   何よりの収穫だったが、これらがずっと以前のように自生するようになればどんなに良いことか
   と思った一日だった。


   沢入駐車場 9:20  山彦荘 10:33  入笠山 11:45  首切清水 12:33

   ゴンドラ駅 13:50  沢入駐車場 14:56


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