風が収まってきたので、レインウエアを脱
  いで歩く。上空の雲も少しずつ薄れてきて時
  折、日が差してきた。

   ミヤマミミナグサ、タカネシオガマが出て
  きた。

   それまでの小太郎分岐から肩の小屋にかけ
  ては花がほとんど見られなかったが、ここか
  らはたくさんの花が見られそうだ。

   ミヤマシオガマの良い株が姿を見せた。こ
  の花は初夏に咲くもので、この時期に見られ
  るのはよほど遅れて咲いた株だ。
    タカネシオガマ
       ミヤマダイコンソウ、イワギキョウが現れ
    た。

     イワギキョウは肩の小屋から両股小屋分岐
    にかけての限られた場所に群生する。特に東
    側の斜面に結構な数が咲いているが、ほかの
    場所では見たことがない。

     ウサギギクも2輪、見ることができた。
  ミヤマシオガマ
 
  ミヤマダイコンソウ イワギキョウ
     程なく北岳の山頂部が見え、登頂した人々
  の姿も見えた。

   山頂少し手前の岩場の間から富士山が見え
  たが、目の錯覚なのか富士山がずいぶん下に
  見える。

   しかし山頂では、やはり富士山は高いと改
  めて思った。
    北岳山頂
 
  山頂からの富士
     我々が山頂に着いた時には10人程度いた
  が、すぐに父親と息子の二人連れの2組だけ
  になった。地図を出して山座同定をしており、
  聞かれたので答えた。

   彼らは昨日北岳山荘まで行って、今日は間
  ノ岳からここまで来て、これから広河原に下
  りるという。小学5年生くらいの男の子だが、
  「良く歩いたね。すごいね。」とあーちゃん
  が感心している。男の子がとても楽しそうな
  のが微笑ましい。

   
別れて、山荘方面へ下る。タカネツメクサがき
   れいだ。
  タカネツメクサ
     ここからの下りも至る所に花が咲いている。

   ヨツバシオガマもまだ残っているものがあ
  り、タカネヤハズハハコがある。

   キタダケキンポウゲがまだ残っていた。こ
  れは北岳の固有種で、ほんの一部の場所にし
  かない。もうこの時期は残っていないだろう
  と思っていたが、わずかに2株ほど花が残っ
  ていた。

   シコタンソウやシコタンハコベも至る所で
  小さな群生を作っている。
  ヨツバシオガマとタカネヤハズハハコ
 
  キタダケキンポウゲ シコタンソウ
       尾根筋を降りていて、道をわずかに外れた
    南斜面を見てみると、キタダケトリカブトや
    タカネナデシコ、ミネウスユキソウなどの小
    さなお花畑が見られた。

     しばらく写真を撮っているとあーちゃんが、
    「早くトラバース道に行こうよ。」とせかす。
  シコタンハコベ
 
  南東斜面上部のお花畑
     ウラジロキンバイがあった。この場所は以
  前からあることを承知していたが、今回初め
  ての発見があった。

   ミヤマキンバイと花や葉っぱの形は同じも
  のだが、葉の裏が真っ白なのがウラジロキン
  バイ。この時期はもうミヤマキンバイはほと
  んど終わっているので、キンバイが目につい
  たら葉の裏をめくって歩いてみた。そうする
  と今咲いているのはほとんどウラジロキンバ
  イだということがわかった。

   ウラジロキンバイは咲く時期が遅いものが
  多いことがわかった。
    ウラジロキンバイ
     トラバース道に入る。あーちゃんが、「以
  前ここを歩いた時、あまりにも花が多すぎて
  コースタイム45分のところを2時間かかっ
  たことを覚えてる?」と言ったけど、それほ
  どかかったとは記憶になかった。

   しかし、ここはいつ来ても期待以上の花々
  が迎えてくれる。

   今回も、「すごいねぇ。すごいねぇ。」の
  連発だった。
   タカネナデシコ
 
   キタダケトリカブト キタダケヨモギ
 
  シナノオトギリ イワオウギ
       あるところで立ち止まって、左右と前のお
    よそ10m位の範囲の中にどのくらいの種類
    の花があるのか数えてみた。

     シラネヒゴタイ、カンチコウゾリナ、ミヤ
    マアワガエリ、ミヤマミミナグサ、ミヤマア
    キノキリンソウ、ミネウスユキソウ、ムカゴ
    トラノオ、ハゴロモグサ、ハクサンフウロ、
    ミヤマキンポウゲなどなど18種類もあった。

     場所を変えれば上記のほかにも見られる種
    類もあり、なんとも嬉しい道だ。
  チシマギキョウ
     トラバース道でしばらく堪能して、八本場
  のコルに向かう。

   ここでの楽しみはシロバナタカネビランジ
  である。まだまだ旬の株が岩場で咲いていた。
  あーちゃんが、「また咲いていてくれたね。」

   そしてたつさんはコルを少し越えて、ウラ
  ベニダイモンジソウを探してみた。ありまし
  た!! 

   北岳で初めて見る花だ。葉の裏をひっくり
  返してみたら、薄く赤い色が着いていた
  シロバナタカネビランジ
       二股まで大樺沢を下る。梯子が続く中で、
    数組のパーティーとすれ違う。

     大樺沢の二股近くでは、ミヤマハナシノブ
    とタカネグンナイフウロがたくさん咲いてい
    た。今年は残雪が多かったので今が旬だ。

     前日の二股までの登りではほとんど見られ
    なかったが、相当の数だ。ミヤマハナシノブ
    は絶滅危惧種で、白馬岳近くの清水岳とここ
    にしかないといわれている。あーちゃんの大
    好きな花だ。花の形、淡いブルーの色、葉の
    特徴的な形に魅かれる。

     今日の終盤にまたしても見どころがあった。
   ウラベニダイモンジソウ
 
  ミヤマハナシノブ タカネグンナイフウロ
     
  <第3日目>   
     御池から広河原へ下りる途中で、思いがけ
  ない贈り物が残っていた。

   レンゲショウマがあった。

   2008年8月に大樺沢ルートの途中で見
  て撮っていたが、それ以降、毎年探すも見つ
  からなかった。御池から広河原のルートを8
  月の中旬に通ったのは初めてなので、ここに
  も咲いていることがわかってよかった。
    レンゲショウマ
 

 


     今年のこの時期の北岳の花は、山頂部周辺(肩の小屋から北岳山荘、八本場のコル)は
    見事だったが、トウヤクリンドウは数が少なく、去年まで咲いていたヤナギランは見られ
    なかった。そこを外すと意外と少なかった。

     大樺沢は二股上部の花が見事だった。ミヤマハナシノブが旬で例年だと多いミソガワソ
    ウが少なかった。また二股株も例年よりずっと少なかった。

     同じ時期でもその年によって違う現れ方があるため、毎年登ってみたくなる山だ。


   御池小屋 5:30  二股 5:58  小太郎分岐 8:00  肩の小屋 8:33

   北岳山頂 9:45  トラバース道分岐 10:40  八本場のコル分岐 11:40

   八本場のコル 12:10  二股 14:06  御池 14:37


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