北 岳


                         2010年7月2日〜3日


 6月25日にようやく広河原までのバスが開通し、キタダケソウも開花したとの情報もあり、
北岳に行ってきた。キタダケソウを見ることが最大の目的である。



  今年はどこも残雪が多いようだ。北岳肩の小屋のホームページではキタダケソウの開花が例年
 より遅れるとのことで、当初の予定を少しずらしての出発とした。
  平日ということもあって、芦安5時10分の乗合タクシーは9人乗り一台のみの発車で、釣り
 をする人が5人、甲斐駒に登るという人が一人、北岳に登るのは我々2人を入れて3人だけだっ
 た。
  この時期、好天は望むべくもないが、天気予報では一日中雨に降られる心配はないので、小屋
 に着くまでに降られなければいいねとあーちゃんと話す。ところが、広河原へ向かう林道からは、
 白根三山の稜線がはっきり見えている。そして広河原では、雲が一部かかっているものの北岳が
 見えている。これはラッキー!!
  こうなるともう気分は爽快。山屋って単純だな。

〈第一日目〉
     
   広河原山荘には張り紙があって、大樺沢ルートは通行禁止になっている。まだ、水量も多く、流木
 などで沢に橋がかけられないらしい。
  この情報はあらかじめ分かっていたので、御池ルートを通ることで考えていた。
  本当なら、二股までの大樺沢のほうが、歩きやすいし、景色も変化に富んでいてすきなのだが、御
 池ルートは結構なのぼりが続くので帰りに通るのならと思っていた。

  オククルマムグラやテンナンショウ、サワギクが見える。ミヤマカラマツももう花を咲かせており、
 キリンソウが肉厚の葉っぱをつけ黄色い花を開かせ始めていた。コアジサイももう少しで薄紫の花を
 見せそうだった。いつもの場所のクリンソウは終わりかかっていた。

  去年6月中旬にはタチカメバソウがいくつも咲いていたが、今年は一つも見えなかった。

     
  ミヤマカラマツ   キリンソウ
 
      二股への分岐から御池ルートの急
   坂が、第二ベンチの上約15分まで
   続く。でも、空は真っ青で雲ひとつ
   ない。ほんのわずかの間だろうが、
   今時にしては貴重だ。

    下のほうのマイヅルソウは終わり
   かけていたが、登るにつれて、マイ
   ヅルソウ、ゴゼンタチバナが多く咲
   いている。

    第一ベンチではこの時間日陰がな
   く、日差しが強い。ヤグルマソウが
   いくつか咲きはじめている。

    第二ベンチ付近には立派なミヤマ
   バイケイソウが一株だけあった。こ
   のような尾根筋に珍しい。
   
     ゴゼンタチバナ
     
  ヤグルマソウ   ミヤマバイケイソウ
      このルートではランもいくつか見ら
   れるので楽しみな道でもある。

    昨年はホテイランとオノエランが見
   られた。

    今回も、もう終わりに近かったが、
   コフタバランを2つほど見た。
 
    また、イチヨウランも兜の角のよう
   な顎片が垂れているのが一輪あった。
   ところが帰り道でふと立ち止まったと
   きに、まだ旬の株が見られることにな
   る。

    そしてちょうど咲きはじめのキソチ
   ドリが御池小屋近くまで所々に見られ
   た。

    ツバメオモトは何とか花が残ってい
   た一株を見ることができた。
   キソチドリ  
     
    御池到着。
    大分雲が出てきた。ここでしばらく
   休憩。

    その後、草すべりを歩き出す。この
   最初の登りが結構急坂。
    残雪はほぼ消えかかっていた。

    ミヤマキンポウゲ、キバナノコマノ
   ツメ、サンリンソウが出迎えてくれる。
    雪が解けてようやく顔を出したとい
   うところ。
   
   御池から草すべりのとっつきの道
 

 

  キマナノコマノツメ サンカヨウ
      御池を過ぎてから、あーちゃんの
   速度が遅くなる。「昨日も寝不足だ
   し、どうも高山病になったみたい。」
   「じゃあ、先を急ぐこともないから
   ゆっくり行こう。」ということで、
   通常の我々のペースでなくゆっくり
   休み休み登る。

     ジグをきっての登りでは、サンカ
   ヨウ、ミネザクラ、ミヤマハタザオ、
   コヨウラクツツジ、ワチガイソウな
   どが現れる。

    右股コースとの出合いの手前に、
   ミヤマアカバナのかわいい花が三つ
   咲いていた。
    またイワカガミも見ることができ
   た。イワカガミはこの先、小太郎分
   岐付近にも大きな群生があった。

    この付近はやっと雪が解けた状態
   で、ショウジョウバカマがたくさん
   咲いていた。

    ミヤマハタザオ
 
  ワチガイソウ ミヤマアカバナ 
 
  イワカガミ ショウジョウバカマ
 
     残雪を乗っ越して、小太郎分岐到着。

    正面に見えるはずの仙丈ケ岳は、上
   半分が雲に隠れている。もうこの時点
   では完全に曇り空。霧はほとんどかか
   っていない。雨が降っていないのが勿
   怪の幸い。

    尾根とそこからの斜面には、ミヤマ
   キンバイ、イワウメ、ハクサンイチゲ、
   チシマノアマナ、キバナシャクナゲが
   いっぱい咲いている。2年前の6月末
   の時よりずっと花が多い。

    
  ミヤマキンバイ 
 
  キバナシャクナゲ  キバナシャクナゲの咲く斜面
 
  ハクサンイチゲ  チシマノアマナ
        
    目を岩場に向けると、小さなコメバ
   ツガザクラやウラシマツツジもそんな
   に多くはないが咲いている。イワツメ
   クサも。さらに肩の小屋に近づくとオ
   ヤマノエンドウも加わった。
    小太郎尾根の花は今の時期がもっと
   もいいように思う。

    ここまで、広河原から歩いてきて、
   下山の人数名に会っただけ。
    登りで追い越されたり、追い越した
   りは皆無。こんなことは北岳では初め
   て。
  ウラシマツツジ 
 
    
小太郎分岐から肩の小屋までは花を眺めたり撮ったりで、1時間もかかった。 これはいつもと
  同じ。
   やはりここまで来ると、草すべりまでで見られる花の種類も違うし、量も断然違う。

   肩の小屋到着。
   はじめは北岳山荘まで行くつもりではいたが、あーちゃんの体調もあり、予定を変更して肩の
  小屋に泊まることにした。

   小屋の中で昼食をとっていると、雨が降り始めた。この雨も20分もしたらあがって、空も明
  るくなったのでキタダケソウを見に出かけた。 

 
    時々ガスは晴れるが視界はよくない。
   ただ、風が弱いことは幸い。
    両股への分岐付近にはかなりのチョ
   ウノスケソウがあるが、蕾は全くとい
   ってよいほどない。山頂を越して八本
   場への分岐付近には蕾が出ているチョ
   ウノスケソウが見られたので、もう少
   し時間がかかるんだろうか?

    クモマナズナ、ハクサンイチゲ、オ
   ヤマノエンドウ、チシマノアマナ、ミ
   ヤマキンバイなどがたくさん見られる
   ところがある。まだ確定できていない
   が、キタダケナズナらしい株も見られ
   た。

 
     
 
   クモマナズナ  オヤマノエンドウ
      山頂の少し手前でムカゴユキノシタ
   が見られた。
    まだ蕾であるが、もう一週間もした
   ら開くのではないだろうか?

    そして、山頂から少し下って、あの
   斜面にキタダケソウが満開の姿を見せ
   てくれた。

    あーちゃんにとっては初めてのご対
   面。
   「疲れも吹き飛んじゃうよね。」
 
     ムカゴユキノシタ
 
   キタダケソウ  キタダケソウ
  〈第二日目〉
      翌日、朝早くは霧で視界ゼロ。寒さ
   はない。

    ゆっくり朝食を食べて、一番最後に
   小屋を出た。
    小太郎分岐までは相変わらず視界も
   悪かったが、雨は降っていない。
    右股を二股まで降りて、二股から御
   池に行き、戻ることにした。
   
    右股コースも上部にはショウジョウ
   バカマがたくさん見られた。その他、
   サンカヨウ、クロツリバナ、コヨウラ
   クツツジ、ミネザクラ、キバナノコマ
   ノツメ、サンリンソウなど。

     右股コースの中間点付近
      二股から御池小屋までの道は、今まで
   見なかった花が見られるのではと期待を
   していた。

    ここの林の道は他のルートに見られな
   い花が時々咲いていたことからの期待で
   ある。

    やはりツマトリソウ、クルマバツクバ
   ネソウ、ヤマネコノメ、クリンユキフデ
   が見られた。
    そして御池ではオオヒョウタンボクが
   すでに開花していた。


    御池でしばらく休憩して、下った。
    ある地点でふと立ち止まると、なにや
   ら白っぽい花の後姿が下方に見える。

    下から回りこんで見てみたら、まだ旬
   のイチヨウランだった。

    今回の最後の収穫だった。
  イチヨウラン
 

  今回も満開で旬のキタダケソウを見ることができた。
  この時期、好天に出会う確率はかなり低いけど、雨に直接降られなかったし、風も弱く、良い山旅ができた。
  北岳は何時来ても花の宝庫。今回も期待を裏切らない素晴らしい山であった。

  初日は大分休み休みのペースで歩いたが、そんなにコースタイムを大幅に遅れていなかった。あのような歩
 き方でいいんだというのも一つの収穫だった。

  2日間、たっぷり遊ばせてもらった。
  



  広河原6:18 御池ルート第2ベンチ7:57 御池小屋9:00 小太郎分岐11:45 肩の小屋
 12:45  その後北岳山頂14:50 キタダケソウ群生地15:15

  肩の小屋6:20 右股との分岐6:55 二股8:07 御池小屋8:45 広河原11:27 
  


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