〈第二日目〉 | ||
4時半に起きて外に出る。 満天の星。雲も全くなく、風もほとんど ない。 ヒュッテのテラスのテーブルや椅子には 霜が一面についている。 5時過ぎにはかなりの人が出てきて、カ メラをセットしている。反対側の涸沢小屋 の明かりがきれいだ。 東の空はだんだん明るくなり、いよいよ 朝焼けに輝く奥穂高から涸沢岳、北穂高の 峰々が赤く染まる時がきた。 |
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涸沢全景 | ||
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奥穂方面 | 涸沢槍方面 | |
素晴らしい光景だ。時間にしてはそれほどではないが、ここでのこういう光景を自分の目で 見るのは初めてなので感動する。 その後少し気温が下がってきたようで、手袋をしていない手はかじかんできた。でも二人と も「すごいね!」しか言葉が出てこない。 そのうち太陽が高くなりだし、カールの紅葉が光り始めてくる。「涸沢の紅葉は日本一だ」 と言われているが、なるほどと思う。 |
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夜明け前から歩き出している人も多いが、 我々は今日はザイテンから奥穂に登って、 もう一泊の予定だから、ゆっくりの朝食。 朝のうちは快晴。柔らかな秋の太陽の光 が紅葉を一層映えさせている。 アタックザックに必要なものを詰めて、 パノラマコースへ向かう。途中で、ヤマハ ハコとイワツメクサのまだ花を開いている 株があった。 |
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イワツメクサ | ||
木々の紅葉の真っ只中に入る。 赤、黄色、オレンジ、緑、カールの岩屑や残雪の白から灰色、空の青、ものすごいコントラストだ。 |
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北穂南稜方面の紅葉 | ||
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白出のコル方面の紅葉 | ||
この紅葉を抜けると左手がお花畑にな り、涸沢小屋からの道にぶつかる。 ここに、ミヤマアキノキリンソウとミ ヤマダイコンソウが少し、ほとんど終わ りのヨツバシオガマが見られた。ほかの 花々はすべて枯れていた。 今年の秋の気温が高かったので今の時 期でも見られたのだろうか? |
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ミヤマアキノキリンソウ | ||
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それにしてもここの登山道の整備には 驚いた。「すごいね。ここの道の整備。」 と言うと、あーちゃんも「ほんと。あた し達がよく歩いた山とは段違いだね。」 涸沢ヒュッテの手前から感じていたこ とであるが、大きな岩がごろごろしてい るところが普通であるのに、その道がと にかく平らに作られている。それはザイ テンからの下りで見ると、岩の中に一本 まっすぐな登山道ができているのが一目 瞭然で分かる。 そうとうの年月と労力があって、平ら な岩を並べたり、削って平らにしている のだ。 また、いたるところに進路を示す○印 や矢印が書かれていて、いずれも登山者 の安全確保に大いに役立っていることだ ろう。さすが北アルプスの山だと思った。 |
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ザイテングラードを登るのは実に44年 ぶりである。高校2年のときに合宿でここ を登って奥穂の山頂に立っているが、その 当時の記憶はほとんど残っていない。 奥穂山荘に到着。 ここも岩を平らに敷き並べてその上に小 屋が立っている。昔からそうだったんだろ うか? ここから急な岩壁をはしごなどを使って 登る。ジャンダルムが見えてきた。残念な がら、奥穂山頂から槍ヶ岳などはガスに隠 れて見えなかった。 |
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ジャンダルム | ||
奥穂山荘に戻ってまだ10時40分。 ここで二人の考えが変わった。 天気もいいし、紅葉も最盛期を迎えようとしているので、昨日以上に小屋は一杯らしい。 だったら、十分満喫したことだし、徳沢あたりまで降りようと言うことになった。といっ て、そんなに急ぐこともない。どうも二人とも混雑する小屋で寝るのが苦手だ。 ゆっくりザイテンを下りる。北尾根の紅葉も、上から見る涸沢カールの紅葉も見事。 |
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北尾根の紅葉 | ||
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ザイテングラードから見た涸沢カールの紅葉 | ||
下ってパノラマコースで再び紅葉の真っ 只中に入る。 ナナカマドの緑の葉、黄色からオレンジ の葉、赤の葉が交じり合って素晴らしい。 |
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ヒュッテのテラスでお昼を食べ、荷物をまとめて下山する。 上高地までは無理なので、途中徳沢でならまだ楽に泊まれるだろうと思っていた。ところがこれ は甘い考えだった。 横尾に着くと、山荘前には登山客がたくさん寛いでいる。ちょうど着いて整理体操をしている人 たちも、サンダルを履いて散策している人たちもいる。ここに泊まってここから涸沢に行く登山者 がたくさんいるらしい。 少し休んで徳沢に向かう。午後の4時であるが徳沢方面からの登山者があとを絶たない。かなり の人たちとすれ違った。「みんな横尾に泊まるんだろうね。」「すごい数だね。横尾も超満員だね」 徳沢に着いたら、満員で泊まれないと言う。明神ならすいていると言われる。想像していなかっ た。二人ともかなり歩いてきて疲れてもいたのでここでテントでも借りて泊まろうかとも思ったが、 暗くなる前には着くし、万一暗くなってもヘッデンも持っているし、明神まで行くことにした。 徳沢から明神の間では、さすがに上高地方面からの登山客には会わなかった。陽が落ちて、暗く なり始めてようやく明神に着いて泊まることができた。久しぶりの長時間歩行だった。 「この時期は平日でもこんなに人が来るんだね。」 |
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これまで、北海道の大雪の紅葉が一番だと思っていた。今回涸沢に来てここもすごいと感じた。 日本一の紅葉はどこかを論じるつもりはないが、北海道は山全体の紅葉が見事で、特に赤が多い と思うし、チシマザサの緑が特徴だと思う。これはハイマツの緑と色相が違うことでの色使いの多 彩さがあるように思う。 一方涸沢の紅葉は、背景にある穂高連峰の壮大さと相まったカール全体の構図の見事さがある。 こういう風景を見ていると、四季の多彩な日本に生まれてよかったとつくづく思う。 本当に十分遊ばせてもらった正味2日間だった。 河童橋8:50 明神9:35 徳沢10:25 横尾11:42 本谷橋13:42 涸沢ヒュッテ15:30 ヒュッテ7:05 涸沢小屋との分岐7:55 白出のコル9:30 奥穂高岳10:18 ヒュッテ12:40 ヒュッテ発13:17 本谷橋14:28 横尾15:42 徳沢16:45 明神17:40 |
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