鳳凰三山


                        2014年9月15日〜16日


   鳳凰三山は毎年のように計画に挙げてはいるが、なかなか実現しなかった山である。特に
 理由はないのだが、北岳が近くにあるためそちらに向かってしまうことが多いためでもある。
  まだ見たことのないホウオウシャジンを見ようとこの時期、夜叉神峠から広河原に下りる
 ルートで行ってみた。


  今年はホウオウシャジンとタカネビランジを見る目的で8月中旬から下旬に行く計画でいた。しかし、夜叉
 神峠から広河原までの南アルプス林道が土砂崩れのために不通になっており、マイカーだと夜叉神峠往復のル
 ートしか取れないため、その時期は奈良田から北岳に行ってしまった。
  8月30日に南アルプス林道が開通したので、花の時期には遅いことになったが南御室小屋でテント一泊で
 行くことにした。

   <1日目>  
     芦安の駐車場を通って夜叉神峠に向かった
  が、3連休の最終日とあって、芦安の駐車場
  にはまだかなりの車があった。
  
   夜叉神峠の駐車場もかなりの車であったが、
  売店の近くに何台かスペースがあった。

   天気は曇り。風がないので半袖でスタート。

   カラマツの樹林帯を登る。たくさんのキバ
  ナアキギリと少しのママコナが見られた。

   キバナアキギリは初めて見た花で家に帰っ
  てから調べて名前がわかった。
    キバナアキギリ
       ママコナも多分そんな名前だろうと思って
    いたが、調べたら半寄生の植物だそうだ。

     レイジンソウやイブキゼリ、ミヤマアキノ
    キリンソウも何とか花が残っていたが、多く
    の植物はもう花をつけていなかった。

     ヒロハテンナンショウの赤い実が鮮やかだ
    った。

     1時間ほどで夜叉神峠に着いた。
  ママコナ  
       夜叉神峠では3組のパーティーが休んでい
    た。ここにだけ来た人もいるようだ。

     峠小屋の周囲はお花畑にもなっているが、
    ハナイカリ、マツムシソウ、ツリガネニンジ
    ンがわずかに花をつけていた。

     ここからは白峰三山が見えるが、霧が一時
    晴れて何とか三山が見えた。

     今日、周囲の景色が見えたのは結局ここだ
    けだった。
  ヒロハテンナンショウ
 
  ハナイカリ マツムシソウ
       少しあるくとウメバチソウが咲いていた。
     ここのウメバチソウはほかのと比べて、花
    弁が大きい。

     ここから少し下って、緩い登りが続くコメ
    ツガの林の道となる。尾根筋ではあるが、尾
    根の少し西側を通る部分が多く、右に尾根が
    あり左はコメツガの林で、南アルプスらしい
    原生林とはいえるが、うっそうとしていて眺
    望は開けない。
  白峰三山
 
  ウメバチソウ こんな道がずっと続く
     この時期なのでキノコ類がたくさん出てい
  る。キノコは種類が全く分からない。

   ここの道で唯一と言っていい花は、セリバ
  シオガマだ。結構咲いていた。

   杖立峠を過ぎ、2200m付近でダケカン
  バが出てきた。この辺は山火事跡らしい。そ
  の痕跡は見られないが、ダケカンバがそこだ
  けに生えているのは山火事で焼失した樹木の
  後に再生する木だからだろう。

   苺平という地名があったので、草原を想定
  していたが樹林の中のわずかな平坦地だった。
  セリバシオガマ
     苺平からは下りになる。ここも樹林帯の道
  だ。

   ほどなく南御室小屋に着いた。

   コースタイムでは5時間10分となってい
  たが、休憩を含めて4時間とちょっと、13
  時半まえに着いてしまった。

   登山道に急な傾斜のところがなく、歩きや
  すい道でもあったが息が上がらないよう一定
  のリズムで歩いただけだ。ただ眺望が効かな
  い道だから、休みも少なくひたすら歩いたか
  らかもしれない。ほかの資料のコースタイム
  に6時間40分というのがあったが、ゆっく
  り歩いてもそれほどはかからないと思う。

   3時ころに着けばいいと思っていたので、
  テントを張って小屋の周りの花を撮って過ご
  すが時間がたっぷり残る。本でも持ってくれ
  ばよかった。
    ヤマオダマキ
     小屋の横には冷たい沢水が流れていて、南
  アルプス天然水と書いてある。おいしい。

   宿泊地では水が自由に使えるのはとてもあ
  りがたい。

   ヤマオダマキ、キタザワブシ、ヤマハハコ、
  ヤナギラン、キオンがまだ残っていた。キタ
  ザワブシはトリカブトの一種だが、トリカブ
  トも種類が多くとても分類はできないので、
  「この小屋周辺にキタザワブシが咲く」と書
  物に書いてある通りとした。

   テン泊者はほかに2組。小屋の宿泊者は数
  人だった。
    キタザワブシ
 
  ヤナギラン ヤマハハコ
  <2日目>   
     昨夜は何もすることがなかったので早く寝
  てしまい、2時には目が覚めてしまった。

   テレビの山の番組ではご来光を見るために
  2時とか3時に出発するのを見るが、われわ
  れにはそういう習慣はない。空には星もなく、
  ご来光が見える天気ではないけれど、暇を持
  て余していたので4時半には出発することに
  した。

   ヘッデンをつけて歩く。

   砂払岳に着いて東の方向の一部にオレンジ
  の空が見えるが、ご来光は見られなかった。
   早朝の富士 
     砂払岳に出て、昨日からずっと続いていた
  樹林帯を抜けて展望が広がった。

   空はまだ一面雲に覆われているが、視界は
  すこぶる良好だ。富士山がきれいだ。

   薬師岳小屋の宿泊者がここや薬師岳からご
  来光を見ようと来ていた。

   小屋のベンチで朝食をとって歩き始める。

     日の出時刻の東の空と薬師岳
     薬師岳山頂付近からホウオウシャジンやタ
  カネビランジが見えだしたが、特にタカネビ
  ランジはほとんど終わっていて、残っている
  ものも濃いピンクは薄れていた。

   ホウオウシャジンは実際には初めて見た。
  ほかのシャジンと葉の形と花のつき方がかな
  り異なる。

   2つの写真はここから高嶺までの間で見ら
  れたこの時期で最もよく咲いていた花である。

   タカネビランジはそれでも薄いピンクのも
  のしかなかった。
  ホウオウシャジン
       観音岳の頂きが間近に見える。

     甲斐駒ヶ岳と同様、花崗岩の山なので白い
    山肌がきれいだ。

     白峰三山も全貌が見える。

     モルゲンローテで赤く染まった北岳が見ら
    れないのが残念だった。
  タカネビランジ
       ウラシマツツジがきれいに紅葉している。
     ナナカマドの実も赤くなっており、葉もか
    なり赤が増してきている。

     コケモモの赤い実もところどころで見られ
    た。

     この朝の気温は5℃。まだ朝早いため、気
    温は上がっていない。ただ風がないため、そ
    んなに寒くは感じない。
  観音岳
       観音岳を過ぎると、甲斐駒と地蔵岳のオベ
    リスクが見える。

     この日はだんだん天気が良くなり、八ヶ岳
    や中央アルプス、遠く鹿島槍も見られたが、
    北アルプスの山は山頂部に雲が一部かかって
    いて、すべては見られなかった。
  ウラシマツツジの紅葉   
       ウラベニダイモンジソウやトウヤクリンド
    ウも花をつけている株が少し見られた。

     地蔵岳へはここから一旦下り、再びアカヌ
    ケ沢の頭まで登る。

     その途中でイワインチンが小さな株ではあ
    るが、たくさん見られた。ちょうど旬のよう
    だ。黄色がとてもきれいだ。

     賽の河原にはたくさんの地蔵が置かれてい
    た。
  地蔵岳と甲斐駒ヶ岳   
 
  イワインチン  地蔵像 
     北岳からよく眺めていたオベリスクに近づ
  く。この途中にタイツリオウギがたくさんあ
  り、名前の由来の通り釣られた鯛の形をした
  実をつけていた。

   よくこんな堆積した岩ができたなと思う。

   途中まで行ってみた。

   その後、アカヌケ沢の頭まで引きかえして
  左下に広河原を見ながら高嶺へ向かう。

   このころから空は快晴になり、気温も上が
  ってきた。

   コバノコゴメグサだけは薬師岳から高嶺あ
  たりまで、ところどころで咲いていた。
 
    オベリスク
       高嶺から北岳を眺めると、山頂部や肩の小
    屋、御池小屋、草すべり、小太郎分岐から下
    の高茎草原などが手に取るようにわかる。

     高嶺からはしばらく急な下りが続き、白鳳
    峠を経て、広河原に向かった。

     樹林帯の下部の日蔭の中では、コウシンヤ
    マハッカやサラシナショウマの花々がまだ見
    られた。
  コバノコゴメグサ  
   
  北岳(白峰三山) 
 

 


    鳳凰三山を縦走してきた。8月中旬に行く予定でいたが、スーパー林道の不通でどうしようかと
   迷っていて結局行かずじまいだった。でも正解だった。やはりこの山は縦走に限る。

    またどの山でもそうではあるが、この山は眺望が望める時に歩くべき山だと思った。見ごろの時
   のタカネビランジとホウオウシャジンを見てみたかった。


   登山口 9:15  夜叉神峠 10:10  杖立峠 11:23  苺平 12:47

   南御室小屋 13:23

   南御室小屋発 4:37  砂払岳 5:27  薬師岳 5:54  観音岳 6:23  

   地蔵岳 7:40  アカヌケ沢の頭 8:10  高嶺 8:52  白鳳峠 9:41

   広河原 11:30



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