<第二日目>  
      野鳥のさえずりで目が覚めた。
    今朝のあーちゃんは膝の状態が思わしくな
   いため、花の散策には一人で行くことになっ
   た。

    どこから行ってもいいのだが、今日は地蔵
   尾根から横岳に行って引き返し、赤岳から文
   三郎尾根を下ってくることにした。

    一人でしかも空身であるから速い。といっ
   ても急いでいるわけでもなく、自分のペース
   で登っている。ただ、写真を撮っているとき
   に一緒に休憩を取っている感じなので、改め
   て休みを取ることはない。
    コメバツガザクラ 
      地蔵尾根への取りつきの林の中の道にはま
   だ雪が残っていた。45分で地蔵の頭に出た。
 
    稜線上は少し風があったが、寒いというわ
   けでもない。今朝は行者小屋の寒暖計は8℃
   だった。

    赤岳は一部に雲がかかっていたがそれもす
   ぐに取れてきた。

    さっそくコメバツガザクラが姿を見せた。
   次いで、チョウノスケソウだ。ここから先、
   チョウノスケソウはところどころ見られたが、
   まだほんの咲き始め。蕾もたくさんあった。


      次いでイワヒゲとウラシマツツジが現れた。
    チョウノスケソウ
 
   イワヒゲ ウラシマツツジ
    
    このあと、ナズナ類が出てきた。
    
    以前、北岳の花々を撮っている過程で、ナ
   ズナと名前がつく植物がいろいろ出てきた。
   いずれもアブラナ科であるので花の形はすべ
   て同じであるが、ハタザオ属とタネツケバナ
   属に分かれるということがわかり、その後い
   ろいろ調べて大分わかってきた。
    即ち、花だけを見ていたのでは区別がつか
   ないが、根生葉を見たり種の付き方や葉や茎
   に毛があるかないかを見たりすると同定がで
   きる。

    まずはキタダケナズナ。根元の葉がロゼッ
   ト状で、葉裏に毛がある。毛のないのがシロ
   ウマナズナだそうだ。

    次いでミヤマタネツケバナ。もう種をつけ
   ている株があったが、葉が楕円形である。

    最後がクモマナズナ。葉が長い楕円形で深
   い鋸歯がある。
 
 
    キタダケナズナ
 
   ミヤマタネツケバナ クモマナズナ
      ハクサンイチゲやオヤマノエンドウが現れ
   た。

    ハクサンイチゲはやっと咲き始めた状態で、
   これはとてもすがすがしい感じがした。
    ただ、咲いている場所が岩の上でもあるた
   めか、全体の株が小さい。

    オヤマノエンドウは、この時期白い花の多
   い中で、彩りを添えてくれる貴重な花だ。

    ミヤマキンバイの黄色も際立っているが、
   まだやっと咲いた程度。

 
    ハクサンイチゲ
       花を見るのに気を取られていて、ふと振り
    返ると主峰赤岳が迫力ある姿を見せてくれて
    いた。

     残念ながら曇り空であるが、視界は悪くな
    く、富士も見えたし南アルプスの甲斐駒、仙
    丈もうっすらと見えていた。

     月曜日ということで、登山者は少ない。
     天望荘に泊まったのであろう人が横岳方面
    に向かって数人が歩いている程度だった。
   オヤマノエンドウ  
         チシマアマナが一つだけ見られた。もう終
    わりに近い株だった。

     また、キバナシャクナゲも開花し始めてい
    た。

     日ノ岳あたりからツクモグサがかなりみら
    れるようになった。

     ただ、残念ながらツクモグサは終盤の状態
    のものが多いように思われる。

     陽が出ていないため開いていないものも見
    られる。

     ツクモグサについては、開いていないもの
    のほうがこの花らしいという人もいるが、や
    っぱりきれいに開いた状態のほうが好きだ。
  赤 岳
 
   チシマアマナ  キバナシャクナゲ
 
   ツクモグサ  ツクモグサ
      イワウメもところどころで姿を見せてくれ
   たが、カーペット状に広がっているところは
   ここにはない。

    ウルップソウもあったが、まだ蕾の状態。
    薄い紫の花が見られるにはもう少し時間が
   かかりそうだ。

    しかし、地蔵の頭から横岳までの間によく
   もこれだけの花々があるものだと感心する。

    硫黄岳から横岳までの間でも5年前にこれ
   らの花々が見られたから、地蔵の頭から硫黄
   岳までの間の植生は八ヶ岳全体の中でも稀な
   場所なのだろう。
     イワウメ
       横岳から引き返して、赤岳まで行くことに
    した。

     地蔵の頭から赤岳までの間では、オヤマノ
    エンドウが一株、コメバツガザクラとイワウ
    メが少々、それにキバナシャクナゲが少しだ
    け見られたに過ぎない。

     テン場に戻ったら、あーちゃんが「速いね!
    もう帰ってきたの?」
     出てから4時間だから、まあ速かったけど、
    しっかり見て撮ってきたし、十分な登山だっ
    た。
   ウルップソウ  
 
    その後、早い昼食を食べ、テントを撤収して2時間で美濃戸に戻った。

    雪解けとともに咲き始めるツクモグサを始め、初夏の高山植物を堪能してきた。

    八ヶ岳の中でも今回歩いた地蔵の頭から横岳または硫黄岳の道は、花好きにとっては素晴らしい
   道だと思う。

    またゆっくり山で過ごすのもいいものだとつくづく思う。

    

  9日:登山口13:20 行者小屋16:22 

  10日:テン場5:20  地蔵の頭6:05  横岳7:20  地蔵の頭7:57 

      赤岳8:27  テン場9:15


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